このページは、Phase 1「線形代数」の一部として、ベクトルとは何かを扱う。目的は、記号を暗記することではなく、式・図形・変換・座標の対応を取り戻すことにある。
最初の入口:ベクトルとは何か
まず大事なのは、ベクトルを「数字の並び」と見ないこと。 たとえば、
は、単に「3と2」ではない。 これは、
ある空間の中で、右に3、上に2だけ進むという関係・移動・差分
である。 つまりベクトルは、点そのものというより、
あるものから別のものへ向かう差
空間の中に置かれた向きと大きさ
座標で表現された関係
として見るのがよい。 ここがすでに、LLMの潜在空間にもつながる。LLMの内部ベクトルも、「意味そのもの」ではなく、巨大な空間内での位置・方向・近さ・変化として扱われる。
最初の理解確認
問い
ベクトルは、例えば
だと、二次元平面上の点Aと点Bの関係、という理解でいい? ということは、三次元空間上の関係、四次元……というベクトルもある? 行列は、そうなんだ、という感じ。
が、なぜ平面上のすべての点を横方向に2倍する操作なのかは、まだ全然理解できてないけど大丈夫?
整理
その理解でかなりよい。ただし、少し精密にすると、
は、
点Aから点Bへ行くとき、右に3、上に2だけずれている
という関係を表している。 もし点Aが
点Bが
なら、
なので、AからBへのベクトルは
になる。 つまりベクトルは、点そのものというより、
2つの点の差
位置の変化
空間内の関係
である。 ただし、原点から見れば、上のベクトルは「原点から点 (3,2) へ向かう矢印」としても描ける。 だからベクトルには二つの見方がある。
| 見方 | 意味 |
| 原点から点への矢印 | 位置ベクトル |
| 点Aから点Bへの差分 | 変位ベクトル |
本質的には、後者の「差分・関係」として見るほうが強い。
三次元、四次元のベクトル
三次元なら、
これは、
右に3、奥に2、上に5
のような空間内のずれである。 四次元なら、
のようになる。 ただし四次元は、もう普通には図として見えない。でも数学的には同じである。 2次元では成分が2個。3次元では成分が3個。4次元では成分が4個。1000次元では成分が1000個。 つまり、
のように、成分が n 個あるものを n 次元ベクトルと呼ぶ。 ここがLLMにつながる。LLM内の単語や文の表現も、ざっくり言えば、数百次元〜数千次元のベクトルとして扱われる。人間には図示できないけれど、数学的には「高次元空間内の点・方向・関係」として扱える。